国内でずっと観測されてきたレベルと変わらないレベルなのに会見とはこれいかに

⇒「福島第一原発敷地外でプルトニウムを検出」(2011年6月6日追加)

⇒「土壌中に含まれていた放射性プルトニウム238は0.54ベクレル」から続き

福島原発内の土壌からプルトニウムが検出されたという東電の会見での
「もともと国内でずっと観測されてきたレベルと変わらないレベルなので、問題がない」
という表現が気になったので、調べてみた。(これまでと変わらないレベルなら、検出されたプルトニウムは今回の事故によるものじゃなく、以上でも何でもないのに、なぜわざわざ会見を開いたのか?という疑問)

【前提知識】
天然に存在するプルトニウムは極めてわずかで、現在地球上に存在するプルトニウムは、核実験等の結果生成されたものと考えてよい。
1945年以来、約10トンのプルトニウムが、核実験を通じて地球上に放出された。核実験のフォールアウト放射性降下物、死の灰)のために、既に世界中の人体中に1~2ピコキュリー(0.037~0.074ベクレル)のプルトニウムが入っている。フォールアウト起源のプルトニウムが地表面の土壌に0.01~0.1 pCi/g(0.037~3.7ベクレル/kg)存在する。

日本国内の土壌には、プルトニウム238は0~0.15Bq/kg、プルトニウム239、240は0~4.5Bq/kg含まれている(文部科学省「環境放射線データベース」昭和53年~平成20年)。合計では0~4.65ベクレル。

【今回の測定結果】
今回福島原発で検出されたプルトニウムは
グラウンド付近で
プルトニウム238が0.54Bq/kg(誤差:±0.062)、プルトニウム239、240が0.27Bq/kg(誤差:±0.042)、合計では0.61ベクレル/kg
固体廃棄物貯蔵庫前で
プルトニウム238が0.18Bq/kg(誤差:±0.033)、プルトニウム238、240が0.19Bq/kg(誤差:±0.034)、合計では0.37ベクレル/kg
検出された。
⇒会見資料(http://www.tepco.co.jp/cc/press/11032806-j.html

合計では、通常時の国内の土壌中のプルトニウムの0~4.65Bq/kgの範囲内に収まっていることになる。この値を見る限りでは正常範囲内といえる。

が、
それぞれのプルトニウム238とプルトニウム239、240の比率(放射能比)と比べてみると
国内通常時土壌:0.033(238を0.15Bq/kg、239、240を4.5Bq/kgで計算)
グラウンド付近:2.00(238を0.54Bq/kg、239、240を0.27Bq/kgで計算)
固体廃棄物貯蔵庫前:0.95(238を0.18Bq/kg、239、240を0.19Bq/kgで計算)

通常時の比率から大きくずれていることが分かる。プルトニウム238の比率がかなり高くなっている。このことから、今回の事故によりどこかからプルトニウム238が漏れでて、そのぶん238の比率が高くなっていると考えられる。

【結論】
プルトニウム238,239,240の合計としては通常範囲内の値に収まっているが、プルトニウム238と239、240の比率をみると、通常時の値とは考えにくい。やっぱりどこかからプルトニウム238が漏れている。

さらに⇒「通常時と比べてプルトニウムがどれだけ増加したのか」追加

<単位のメモ>

1キュリー=3.7×10^10ベクレル
ピコ=10^-12
1ピコキューリー=1×10^-12×3.7×10^10ベクレル=3.7×10^-2=0.037ベクレル
地表面の土壌に0.001~0.1ピコキューリー毎グラム=0.001~0.1×10^-12×3.7×10^10ベクレル毎グラム
=0.000037~0.0037ベクレル毎グラム
=0.037~3.7ベクレル毎キログラム

【関連】

福島第一原子力発電所から20-30km圏内の土壌試料のPu、Uの分析結果(4月1日発表)

プルトニウム238、239+240は検出されず、U235/238は自然の存在比だった。


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