年間被曝限度、引き上げ検討

年間被ばく限度、引き上げ検討=原発事故の長期化想定―官房長官
年間1ミリシーベルトとしている住民の被ばく限度量について「現在の基準値は短期間で大量の放射線を受ける場合の安全性を示している。放射性物質を長期間受けるリスクを管理し、別の次元の安全性を確保する上でどのくらいが退避の基準になるか検討している状況だ」と述べ、引き上げを検討していることを明らかにした。・・・(以下略)・・・
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110406-00000050-jij-polより

⇒「年間の被曝限度量、引き上げを検討 原子力安全委」からの続き

【関連】
⇒「避難基準 まとめ」(2001/4/7追加)
【追加情報】
⇒「被曝による健康への影響と放射線防護基準の考え方(日本原子力学会)&放射線防護線量の基準の考え方(原子力安全委員会)」(2011/1/19追加)

そうか、わかった。
日本の現在の「屋内退避及び避難等に関する指標」は、短期間に大量に放射能を浴びる可能性があるような、緊急時の場合を想定しての基準で、そのような事態はすでに去ったと。そして、福島原発の放射性物質の放出が落ち着いてき、大量の放射能が放出されるような事態は去ったものの、長期化が避けられない状況になった今、長期間に徐々に浴びるような状況を想定しての基準を定める必要があるということか。
その基準として、ICRPの3月21日付けの、原発事故などが起きた後に周辺に住む人の年間被曝限度量を1~20ミリシーベルトの範囲が妥当とする声明に合わせ(たかどうかは知らないけど)、平常時ではない非常状況での年間被ばく限度レベルである20mSvにするということか。

現在の日本の「屋内退避及び避難等に関する指標」
・自宅等の屋内に退避:外部被ばくによる実効線量が10mSv~50mSvの場合
・コンクリート建屋への退避又は避難:外部被ばくによる実効線量が50mSv以上の場合

ICRP、2007年の勧告
・公衆被ばくは、確定的影響の増加、がんの有意なリスクがあるため、防護計画策定に当たっては年間100mSvを超えないよう計画しなければならない。
・20~100mSv/年:例:緊急事態における被ばく低減のための対策とるレベル
・1~20mSv/年:例:非常状況での避難、事故後の復旧段階の被ばくレベル
・1mSv/年以下:平常時

引き上げというと基準を緩めているように読めるけど、ICRPの基準と比べると分かるように、避難のレベルが50mSVから20mSvに下がることになる。

年間被ばく限度を引き上げるというより、今まで平常時の年間被ばく限度としての1mSvしか、定められていなかったので、今回、非常状況での年間被ばく限度として20mSvを定めようとしているってことか。
水質基準に関しても平常時での基準と緊急時での基準があるように、年間被ばく限度でもそれを定めたってこと。それ自体はおかしなことではない。

でも、その選択が妥当だとしても、それが正確に伝わり、その選択が受け入れられるだろうか。。。おそらく、避難させなくてもいいようにするために、年間被ばく限度を引き上げたとしか、受け取られていないように思う。(引用の記事にしても、そのように読めてしまう。)

少なくともこのニュースにも出てくる、浪江町の住民を避難させてから、引き上げを検討すべきだと思う。なぜ、こう最悪なタイミングでこういう発表をするかな。。。
<参考>
日本の現在の「屋内退避及び避難等に関する指標」について
原子力施設等の防災対策について」(原子力安全委員)p.22
http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/history/59-15.pdf

ICRP、2007年の勧告について
「国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れに係る審議状況について-中間報告-」(平成22年1月 放射線審議会 基本部会)
「ICRP2007年勧告の要旨について」
「国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告の国内制度等への取入れに係る検討事項の論点整理(案)」p.11(平成22 年12 月7 日 放射線審議会事務局)
「国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告の国内制度等への取入れに係る検討事項の論点整理「緊急時被ばく状況(参考レベル)」(案)」(平成22 年10 月1 日 放射線審議会事務局)

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